
発売中の『航空ファン』3月号では、人類で初めて月面に降り立った
アストロノート(宇宙飛行士)のニール・アームストロングの半生を描いた
映画『ファースト・マン』を紹介していますが、
先週末2月8日から日本でのロードショー公開が始まりました。
作品はアカデミー賞6部門を獲得した『ラ・ラ・ランド』の
デイミアン・チャゼル監督と主演のライアン・ゴズリングが
ふたたびタッグを組んだことで話題になりましたが、
アメリカンヒーローのひとりでありながら人間性や私生活を前面に出すことのなかった
アームストロングについて、
原作となった『ファースト・マン ニール・アームストロングの人生』
(ジェームズ R. ハンセン著、2005年)をもとに丁寧に描き出しています。
作品中にはあのチャック・イェーガーも登場しますが、
パイロットの典型のようなイェーガーと比較すると非常にもの静かながら、
目的を完遂させようとする強い信念を感じさせるアームストロングを、
ゴズリングは好演しています。
作品はアームストロングの人となりを描くことに主眼が置かれているため、
『ライトスタッフ』や『アポロ13』のような航空機やロケット、宇宙船を使った
力強いアクションシーンは多くありませんが、
そのなかでも冒頭、アームストロングが空軍に在籍していた時代の
X-15による試験飛行のシーンや、ジェミニ8でのミッション、
クライマックスのアポロ11でのミッションシーンは美しく、印象的。
こうしたシーンは、ハリウッド映画定番の3DCGには頼らず、
昔ながらのVFX、いわゆる「特撮」を駆使してジンバルに乗せたセットを使って
撮影されており、窓から見えるその船外の背景には
NASAのアーカイブ映像をLED技術でリマスターしたものが投影されました。

激しく回転する機体・船体の動きと背景を同期させるのには
最新のテクノロジーも投入されており、CGとは違った深みのある映像が印象的です。
また、ニール・アームストロングを陰で支える妻のジャネットを演じた
クレア・フォイは、この作品のなかでもひときわ光る演技を見せてくれます。

人間ドラマをメインに据えた映画だと紹介はしましたが、
航空宇宙のシーンの美しさは特筆もので、
ディーク・スレイトンやバズ・オルドリンといった
アメリカの宇宙開発に名を残すメンバーも多数登場します。
ぜひ劇場の大スクリーンでご鑑賞ください。

配給:東宝東和
©UNIVERSAL PICTURES